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その1 鷲巣さんのところと違って、兵藤会長はあまり黒服連中に人望がない。 よって、結果はどうあれ、兵藤会長に一発かましてくれる伊藤開司は黒服たちに密かに人気者。陰でこっそりファンクラブがあったりするが、当然兵藤はおもしろくない。 そのカイジがぼろ負けで地下に逆戻り…兵藤はひとつのたくらみを思いつく。 さて、カイジが地下に戻った翌日、ファンクラブ会員の黒服たちが兵藤によって集合させられた。 一部完成している、地下スペシャルVIPルームの一室に集められた黒服たちは、各々ヤバイと顔を見合わせるが、とりあえず静観…そんなところへ、いきなりスクリーンが現れ、兵藤会長、どアップ。 「諸君の日ごろの苦労に報いるため、ひとつボーナスを用意した」 ぱちんと指を鳴らす兵藤。すると、次の間の扉が大きく開き、そこには紙幣と思われる紙の海と化したベッド上に、裸にされ、猿轡をかまされ、亀甲縛りにされて転がされているカイジの姿が… ざわめく黒服たち。 「何か一勝負して、勝ったものが独り占めするもよし、みんなで平等に分けるもよし…だが、みんなで平等に分けたら、カイジ君が気の毒だがの」 ふぉっふぉっふぉっ…と楽しげに笑う兵藤。さらにざわめく黒服たち。 カイジを好きにしていいというのは、困ったことに僥倖だったりするが、カイジの下にある紙幣が諭吉ではなくペリカ。ずいぶんな量があるので独り占めできれば、円レート換金しても、それなりのボーナスになるが、ペリカの肖像は兵藤。無数の兵藤に見守られながらの情交というのは不可能。萎える。確実に! そんなとき、唐突に入り口の扉が勢いよく蹴破られた。 「勝手なことほざいてんじゃねぇっ!」 遠藤である。 「カイジの元からある借金はともかく、俺がここに落ちることになった追加融資分は、俺がこいつ自身を担保に貸した金だ。金額だけならこっちの方が上だっ!だからこいつは俺のもんだっ!」 えらい勢いで黒服たちを部屋から追い出し、内側から鍵をかけた遠藤。 すぐにカイジの元に駆け寄るかと思いきや、何かごそごそと探し始めた… 「会長、107番カメラ破壊されました」 「こちらもですっ!255番カメラ損傷っ…全滅です」 一室にこれでもかと仕掛けられた盗撮カメラは、遠藤の手によってことごとく破壊された。 「ふんっ、なかなかやりよる。失脚したとはいえ、利根川が街金から引き上げようとするだけの男ではあるよの…まぁよい。あとでカメラの代金として、ペリカは全額回収しておけ」
その2 この地獄の釜の底で、若い嫁さんをもらったと評判の遠藤さん(男だらけなので、かつてこっそりとはいたが、公になってしまったのはこれが初めて)。 いつも深夜にトイレの個室でというのもアレなので、せめて個室オプションを使えるよう、貯金しているが、あと少し足りない。でも、最近はトイレの個室にカメラが設置されているようなので、カイジとのスキンシップはかなり押さえ気味…けっこういろいろ我慢の限界。 なので、かかりの黒服に掛け合ってみる。 「個室っつっても、ひとつのベッドを狭い思いして二人で使うんだから、半額とは言わないまでも少しは値引きしてくんねぇかな?」 「バカもんっ!こちらが何も知らないとでも思っているのかっ!トイレでの淫行に特にペナルティは設けられていないが、ただでさえお前たちのせいで風紀が乱れているんだから、二人で個室一部屋を使用なんてのは呑めんっ!どうしてもというなら、通常の2.5倍の使用料だっ!」 「ぐっ…」 そこへなぜだか視察に来た兵藤会長登場。 「まぁそう言わず、使わせてあげなさい」 「しかしっ!」 「別にかまわん。だが遠藤君、いいのかね?」 「なにがですか?」 「その黒服は新入りで知らんだろうし、めったに使われることがないので忘れられておるが、二人で一部屋を使用の場合、初回は無料という制度がある。まぁ、新婚さんへのご祝儀じゃな。じゃが、当然条件がある。部屋の様子は必ずモニターされ、その中で確実に性交を行わなくてはならない」 「なっ…」 「しかも、それが撮影され、地上で裏ビデオとして販売されることになっても、意を唱えることは許されない。まぁ、一生を地下暮らしの君たちには、そうなったとしても大したダメージはなかろうが、もし親兄弟にでも見られたらと思うと、いたたまれないことじゃうのう…特にカイジ君は」 もし兵藤会長がくたばり、恩赦…もしくはまた特例で地上に出る機会ができたとしても、それこそもう、どこへも行けないような生活を負うリスク…いやそれより、老い先短い母親にイヤガラセでそんなものを送りつけられでもしたら… その3 地底のアイドル伊藤開司が、なにをどう間違ったのか、『元』とはいえ、帝愛関係者…しかもこの地下にはヤツが原因で落とされたという人々も少なくない、元悪徳金融業社長にお嫁にもらわれてしまったので、いつの間にか出来ていた労働者サイドのファンクラブ会員はおもしろくない。 当然、集まれば愚痴大会になるわけだが… 「男だらけなんだし、そういうこともあるだろうが、よりによってなんであんなヤツと…」 まったくだと、うなずく一同。だが、ある一人がこんなことを言う。 「でも、若い嫁さんもらったからって、幸せってこともないだろう?あのカイジさんが相手だぜ?」 「なにっ!」 「だって、この地下でただでさえ少ない稼ぎは嫁さんのギャンブルに消え、でも、こんな地下でやらしてくれる小遣いだと思えば、まだ納まりがつくとしても、最近は便所を会長が盗撮して観察してるらしい…一生地下暮らし大決定で、あのサド会長に目をつけられてる嫁さん…今はらぶらぶモードでも、結構つらいと思うぞ?」 一同しーん… (そうだよな。俺は生き延びればあと5年くらいで地上へ帰れるけど、一生だもんなぁ…嫁さんのせいで) (俺、外にかみさんがいてよかった。もう再婚してるかもしれんけど) (いや、やれるだけやっぱ幸せなんじゃ…でも肉付きなら班長の胸の方が…) みんなそれなりに思うところがあるようである。 それから数日、なぜか今まで邪険にされていた人間からまで、やけに親切にされて、面食らう遠藤の姿があった。 『奈落』をハードに鬼畜にしたような話が個人的ツボです(自分で書くと異様にぬるいんですが…ううっ、文章力があったら、もっとハードコアに書き直したいっ)。 |